生まれ変わっても
また幼稚園の先生になりたい!

もしかすると、最初から自信満々で
幼稚園の先生になる人なんて、
ほとんどいないのかもしれません。
「私、ちゃんと先生できるかな?」。そんな不安を持ちながら、
誰もが幼稚園の先生として働き始めます。
そして現場を経験して、成長し、
この仕事の素晴らしさに改めて出会うのでしょう。
実際に皆さんの少し先輩の先生たちは、
どんな思いで先生になり、1年目を過ごしたのか?
座談会を開催して、聞いてみました。

※この記事内容は2019年時点のものです。

―― みなさま、今日はお集まりいただき、ありがとうございます。本日は、みなさんがなぜ幼稚園の先生を選んだのか、今どんなことをやっているのか、仕事のやりがいなど、色々なことを質問させてもらいます。
共通点は、みなさん幼稚園の先生で、1〜3年目の若手だということだけ。働いている園はもちろん、担任をしている方、副担任をしている方、役割もバラバラです。ぜひざっくばらんに本音を聞かせてください。

どうして先生に?
またどうして幼稚園を選び、そしていま何をしているか

―― まずはどうして幼稚園の先生になったのか、教えてください。

幼稚園は教育の場で、さまざまな課題活動があるので、先生としてのやりがいがより強く感じられそうだなと思い選びました。学校の音楽の先生になるか、どちらかで悩んでいたんですが、中学校の時に職場体験に行ったことをきっかけに、幼稚園の先生が明確な目標になりました。
私は、小さいころからの夢が幼稚園の先生だったからです。
年の離れた弟がいて、一緒に幼稚園で遊んでいたのがすごく楽しくて、その思い出に後押しされて決めました。あとは、自分の特技のピアノを生かせればな、と思って。
大学の授業を通して、改めて幼児教育に携わりたいと思ったからです。初めての「できた喜び」や「できなかった悔しさ」、得意満面な笑み、心からの楽しさなど、子どもたちの様々な感情に触れ合えるのは、幼稚園の先生ならではの魅力だと思います。

―― 私立、公立と同じ幼稚園でも選択肢があると思うのですが、私立を選んだのは何か理由がありますか?

自分が私立幼稚園出身ということもあり、最初から私立幼稚園に行こうと決めていました。それに、私立は幼稚園によって教育内容に特色があっておもしろいです。実際に自分が見学をして良いなと思った園に決めました。
私は公立も受けましたよ!
ただ、公立は異動があるんですよね……。私立はずっとその子たちを見ることができますし、同僚の先生もずっと一緒に働けるのが決め手でした。

―― 確かに、私立は園によってのカラーが違うから自分に合う園を探し出す楽しさもありますよね。ちなみに、1年目の先生はどんな仕事をしていますか?

私はクラスの副担任をしています。クラス活動の内容を決めて進めるのは担任の先生で、私は朝の会や給食のときなどに様々なサポートをします。
私も副担任として、決まった2つのクラスを見ています。それと、私の園では1年目の先生が運動会の体操を代々担当するので、今はその練習をしたりとか。
私は1年目から担任として仕事をしていました。

――1年目から担任!

私たちの園も、1年目から担任でした。

――1年目から担任を持つって、プレッシャーもあると思うんだけど、実際どうでしたか?

学校を卒業して、「幼稚園の先生をやりたい」という気持ちそのままで実践にうつれたので、自分が成長するスピードは早かった気がします。子ども達はもちろん、保護者とも密に接することができました。
私も担任を持ちたかったので、嬉しかったです。もちろん、責任を強く感じていて不安もありましたが、今の自分につながっていることもたくさんあるので、結果的には1年目での担任は良かったなと思っています。

―― 逆に、副担任から入った先生たちが感じる、副担任から始めることの良さはありますか?

私は就職活動のときから、副担任で入れる園を探していました。先生方のやり方もそれぞれ違うので、それぞれの良い部分を見ることができますし。2年目になる来年は担任を持つので、1年目に学んだ先輩たちの良いとこ取りをしてやりたいなと思っています。
副担任だと、クラスを客観的に、担任の先生とは違う目で見ることができるのが良いと思います。あと、私は同じ学年のもうひとつのクラスの様子をその場で伺うことができるので、それ
ぞれの特徴なども見ることができるのは、副担任のいいところです。

先生になって学んだこと

―― 実際に働いてみて思う、私立幼稚園の良さってなんでしょうか?

子ども達と一緒に成長できることは本当に素敵です。ハーモニカだったり、習字だったり、みんなの「できる」が毎日毎日増えていきます。想像以上に、子ども達の成長は早いと思いますし、昨日できなかったことが今日できるようになる、という成長を見られることは、やっぱりほかの仕事では味わえないことだと感じますね。
逆に、昨日できていたのに今日できない、というようなこともありますよね。毎日違う子どもたちの姿を近くで見れるのは、とっても楽しいです。
自分自身も先生として成長できているなというのは感じます。立ち居振る舞い、先生として足りない部分などを日々ほかの先生から学んでいます。
私は、行事を通じて成長を感じました。自分はピアノが本当に苦手だったんですが、1年目の冬に、大きな行事で伴奏を任されることになったんです。最初は子どもに、「それじゃあ歌えないよ」と笑われるほどだったんですが、子ども達のために頑張ろう、という気持ちでやってできるようになった時は本当に成長を感じました。周りの先生達も、心から喜んでくれました。
皆さんすごいですね…。私は1年目で、楽しいことも多いですが、日々反省も多くて、自分が先生をやっているという実感がまだ少ないのが正直なところです。
先生になってすぐの時はみんなそうですよね。特にトラブルが起こってしまった時など緊張します。学校だとトラブルをどう解決に導くか、勉強はしますが答えはないので。実際に年中の小さなトラブルを仲裁するときに、「こっちの言葉を言ってあげたらよかったかな」とか、日常茶飯事です。ほかの先生たちと相談しながら解決していっています。

―― 経験を重ねると、引き出しがどんどん増えて行く感じなのでしょうね。

人間関係の大切さもたくさん学ぶことができます。特に1年目は、自分が先生ということに自信がなくて、子どもの成長は嬉しいけど、ただひたすらに目の前のことをやるという状況が続きがちです。そんな時、周りの先生達に支えてもらいましたし、私もそんな先輩になりたいと思っています。
保護者との対応は、教材では絶対学べないことだと思います。この言い方でいいだろうか、とか、言葉遣いにはいつも気を使っています。特に、良い話ではなくて、子どもがほかの子に手を出しちゃった、などネガティブな話の伝え方は、どう言ったら保護者の方が安心できるのか、という観点で話をするのが難しいですね。
実際の現場と教材とはやはり違うものね。学生時代は、絵本を読んだり、楽しいシーンが先行するけど、実際は、子ども達を引っ張る、リードしていく存在。子どもが怪我しないようになど、常に気も張っていますし。もちろん想像はしていたけど、実際に現場に立って改めて学んだことは多いです。

―― みなさんがクラス全員を見るために気をつけていることはありますか?

気になる子だけではなくて、一番前で先生の目を見て話を聞いている子など、ローマ字のNスタイルで、全体を見て話をするようにしています。

―― 頑張っている子にも気づいている、というのを伝えるのが大切なんですね。

遊び方ひとつとっても、ただ遊ぶだけではなく、案を出しすぎないとか、ルールは子ども達に決めさせるとか、口出しをしすぎないとか、気を使って頑張っています。私の園は遊びを中心にした保育を行っています。遊びの中から学びを考えていくのですが、すごく深い! その解釈を考えながら、悩みながら、日々教育をしています。
実習だと、行事に携わることがないんですが、就職をすると、その準備の大変さを感じます。私は、子ども達に片付けさせる、ということが想像しているよりすごく大変でした。

その他いろいろ

―― 次は、先生になって、これは忘れられない、という思い出を教えてください。

学年が変わったタイミングで、1年目に見ていた子たちから、「先生!」と声をかけられた瞬間です。1年目、これでいいのかな、と悩みながらがむしゃらに担任をやっていたんですが、気づかないうちに子ども達と信頼関係が築けていたんだなと思えて、嬉しくなりました。
バス通学で、最初は泣いていた子に笑顔が出たり、自分に話しかけてくれたりして、子どもの成長を感じた瞬間は、私もほっこりした気分になりました。
ペアの先生が急遽2日間休みだった時ですね。野菜の収穫の行事があって、自分も緊張していたんですが、その空気を子ども達が感じてくれたのか、子ども達が自分たちで「静かにしようよ」という声かけをしてくれて(笑)。一緒にクラスをつくっているんだという一体感が感じられた瞬間でした。
私はなんといっても卒園式です。1年目、担任をした子たちが卒園するというのが、大きかった。保護者の方々が「先生ありがとう」と叫んでくれたり、涙している子どももいて、1年間やってきて本当によかったなと。心からそう思いました。
演奏会で指揮をしたときですね。歌い終わった直後の子ども達の達成感に満ちた表情を見たときにひときわ感動を感じました。自分も不安が大きかったのですが、毎日の積み重ねがあったからこその成功だったので、今でも忘れられない大事な思い出です。

―― 行事だったり、日々の瞬間だったり、それぞれ色々な思い出が出てきました。幼児教育は、今日やったことが明日結果に出るような仕事じゃない分大変な面もありますが、喜びもひとしおなんだと思います。ところで話がガラッと変わりますが、プライベートはどんな風に充実させていますか?

とにかくオンオフをしっかりすること。寝ること(笑)!
作り物が多いので、最初は確かにやることが大変と思ってしまうかもしれません。ただ、出かける予定を入れてしまうと、目標ができて仕事が進むので、ペースがつかめてきます。私はそうやってオン・オフのリズムをつくっていきました。
私も、やらなきゃいけないものは後回しにしても結局やらなきゃいけないので「まずやる」をモットーにしています。

―― 振り返ると、学生時代にやっておいたほうがよかったと思うことはありますか?

現場に出ると、ほかの先生の保育を見る時間が実はあまりないんですよね。だから実習の時に、他の先生の声かけの仕方など、メモを取っておけばよかったなと感じます。
多くの人と関わるので、アルバイトや実習先などでも、敬語の使い方や言葉遣いはもっと学んでおけばよかったなと思います。
パネルシアターをもっと作っておけばよかった。特別な行事に、自分の特技としてあればかっこいいと思うんです。学校で作る機会はありましたが、当時は実習のために作った、という感じでした。子ども達に見せる、教育活動で実際に使う、という視点でやっておけば、今の毎日に使えたのにと思います。
日々のあそびのレパートリーはより多く持っておいたほうが良いかもしれないです。現場で使うということをイメージしてやってみてください。

未来に向けて

―― みなさん理想の先生像ってありますか?

園の特徴・方針をよく理解して、子ども達と向き合える先生になることが目標です。
私は、子どもからも、同僚からも、周りから必要とされる、気配り上手な先生になりたいです。
子どものお手本になれる保育者、です。子ども達は、言葉遣いや仲裁の仕方も、すべて見ているので、真似をされて恥ずかしくない姿でいつも子ども達の前に立ちたいなと思います。
自分が園児の時に、寄り添ってくれた先生が今でも心に残っているので、一人ひとりの心に寄り添って、気持ちを汲み取りながら仕事をし続けたいです。
相手の気持ちを理解できる先生。子どもたちそれぞれに悩みが違うから、それをきちんと理解してあげたいです。
子どものドヤ顔をたくさん作れる先生になりたい。子どもの「できた!」をたくさん引き出せる先生になりたいなと思います。

―― もう1回生まれ変わっても、みなさん私立幼稚園の先生になりますか?

はい!

―― 満場一致ですね。

最後に、先生を目指す後輩たちに向けてヒトコト

いろんな園を見ると、きっと「ここだ!」という園が見つかります。自分のぴったりな園に出会う旅をしてください。
先ずは見学に行って、先生たちの人柄を肌で感じて欲しいなと思います。
幼稚園の先生は、下積みのような時代がなく、1年目から子ども達とたくさん携われる仕事です。自分も子ども達と成長していく仕事なので、本当に楽しいですよ!
この職業でしか味わえない楽しみがたくさんあります。みなさんぜひ先生になりましょう。
同じ日は1日もないし、毎日が楽しいし、毎日が良い日になる仕事です!
子どもの「はじめて」に出会える仕事は、本当にこの仕事だけ。最初自信がないのは当たり前。子どもたちと一緒に成長すればいいのだと思います。ぜひ飛び込んできてください!